エホバの証人からの脱走


第8章 専門家の支援を求める

 どれほど円滑に脱会できたとしても、その決断をしたためにかなりの心配をしなければなりませんし、感情面での苦しみを経験するでしょう。証人の実の兄弟や友人や家族から加えれるストレスもそうですが、ものみの塔の恐怖をばらまくやり方や操りや性的抑圧から生じるトラウマ、それもいつまでもくすぶり続けるトラウマを克服する闘いは避けられないかもしれません。
  私はセラピストの訓練を受けてません。また、人によってそれぞれ、状況は異なりますから、精神面での治療や心理カウンセリングはできません。それでもカルト宗教を経験したために精神面での悩みを抱えているなら、すぐに専門家の支援を求めることを強くお勧めします。心理学を専門分野にする学者Bonnie Ziemanは"Exiting JW Cult:現役の証人と元証人のための治療ハンドブック"と題する素晴らしい本を著しています。
 必要なら心理学的な必要を満たし、実際に専門家に支援をしてもらうべきです。慢性的な極度の落ち込みの感覚、手に負えないほどの憂鬱感、バラック障害、永続的な極度の怒りの感情は専門家の支援を必要とする病の兆候です。
  専門家の支援を求める必要が分かるでしょう。しかし漫然と待ってはいられないかもしれません。たいていの国では精神衛生のサービスが容易に利用できることが重要だという点では合意ができはじめていますが、それが実現するまでにはやるべきことが山ほどあります。例えば英国では国立健康サービスが支払うカウンセリング料を無料にすると言われていますが、待機者リストに載せられ実際に訓練を受けたカウンセラーの前に座るまでには長い時間、待たされるかもしれません。利用可能な人的資源の需要によっては他の国でも同じような制限が避けられません。それでも良い精神状態になるように導くことのできる人が発見してくれる実行可能な手段を利用しましょう。やるだけの価値があります。
  前述のZiemanはその本の中でつぎのように書いています。

 金銭的に困ったなら大学や大学病院の心理療法のトレーニングセンタを探しても構いません。そこでは学生のセラピストがクライアントを探しています。学生たちは実地で新しい対クライアントの技術を実行する必要がありますから、ダンピングした値段を提示したり、支払い能力に応じたスライド制の料金を提示するかもしれません。学生たちはカルトのデブロググラミングの技術に不慣れかもしれませんが、個人的な判断を差し挟まない仕方で傾聴します。クライアントの不安を緩和するために最低限、確実な方法を実施します。

 もし、専門家の支援を求めても、その努力が無駄になったとしても、あるいは料金がひどく高額だったら少なくとも共感してカルトの経験に耳を傾けられる人を捜してください。私がオンラインでZiemanにインタビューしたとき、過去の秘密を守るためには何ができるか尋ねたところ、次の答が返ってきました。

 可能ならそれを話せる場を見つけるべきです。もし、ほかに話せる人がいるなら、または一度もエホバの証人になったことのない親族や友人がいるなら、そうしましょう。今では純粋無垢な人を説得したくはないでしょうし、どうすればいいか分別がついた人になったのです。とはいってもそれが最善の治療方法ではないのですが。

 最適な人を捜すには時間がかかりますし、根気がいります。それでも特に地元にとけ込み、社会生活を再建するのですから、決して不可能ではありません。
  専門家の支援が得られるかの問題のほかに特に脱会に際し精神面で元カルト信者を支援することを主旨にする本を読んだほうがよろしい。Zieman氏はたくさん、素晴らしい本を書いてますがそれらはAmazonで買えます。特に"Cracking the Cult Code for Therapist :What every Cult Victim wants to there therapist to Know"は特に、カルトに不慣れなセラピストのために書かれています。そうしてその本は個人的な治療を与えてくれます。
  もしエホバの証人の経験の故に落胆していたり、気苦労を抱えているなら、そのうちなんとかなるさという希望を抱いて、問題を軽視することだけはしてもらいたくありません。話し合いができる友人や心配してくれる友人がいるなら話し合いがよろしい。あるいは元証人のFacebookグループで思いのたけをぶちまけられるならそれもよろしい。専門家の支援がそこで得られるなら参加しなさい。喪失感や罪の感覚、怒りや裏切られた気持ちを解消するために有益な本があります。それを読んでその中で書かれた助言を取り入れなさい。
  考えた末につらくなって自殺をする気になったとしても、他人まで巻き添えにしないように。誰かがその気になっているとなと察知するなら自殺防止のホットラインに電話しなさい。苦難を切り抜け、くじけないでがんばるには何でもすることです。人生という、素晴らしい、貴重な賜物を楽しみましょう。ものみの塔の犠牲者の長大なリストに加えられてはいけません。悲しいことに犠牲者は非情で非人間的な教義と方針に服従させられました。
  現実的になることも大切です。あまり過大に自分に期待しないように。私の経験では長い間、エホバの証人のような集団に属していた末にその精神的な影響から全面的に解放されようと、スイッチを押そうとしても、リセットボタンはありません。優れた本を読んだり、すばらしいセラピストとやり取りするうちに、エホバの証人の信仰のすべてを破棄できると思ってはなりません。それは幻のイメージです。現実的に推進できる方法に甘んじることです。
  好むと好まざるにかかわらず、宗教は過去のできごとに過ぎません。過去の経験から精神的に傷つけられてしまったのです。恥を感じて傷つくのか、怒りや恨み辛みを抱えて傷つくのか、それは貴方次第です。それはトラウマになる経験を通して、より強い者となった証です。
  すばらしい活動をして強い意識を奮い立たせるか、ほかのカルトの犠牲者や同じようなトラウマを経験した人に親切にし、共感をして、マイナスをプラスに変えましょう。心の痛みがあっても、それをほかの人をも奮い立たせる力強い精神力に変えましょう。
  心の内面のトラブルを克服するにしろ、結局は時間を費やし、涙を流し、辛抱強く耐える価値はあります。辛抱強さと強い意志があると過去の追憶を捨て、将来に希望が持てる域に到達します。自分には時間があると悟ると、慰められます。目の前には幸福があり、自由で有意義な人生が広がってます。


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