エホバの証人からの脱走


第5章 プライバシーを守るには

 インターネットを使う時、かなり注意しなければならないことはおそらく貴方もすでにご承知でしょう。あやしげなe-mailを開封するとウィルスやマルウェアに感染してしまいます。個人情報を漏らすとハッカーに素性を盗まれることもあります。エホバの証人から脱会する過程ではインターネット上の危険性はさらに高まります――証人の友人や親族から察知されて背教者となる恐れ、正式に縁を切る前に長老から発せられる審理の呼出などです。
 インターネットにリスクが潜在していてもそれは命綱でもありますからトラブルの元になります。かつては大切にしていた信仰を暴露し、自由の旅路を始めるとインターネットは発掘した情報の源泉になります。元証人の集まりやイべントの最新の情報を得られます。では、いいとこ取りしながらもリスクを軽減できる方策はあるのでしょうか。
 見つかるのではないかと、びくびくする必要がない時もあるでしょう。すでに断絶した時や近いうちに断絶しようと決めた時です。
ものみの塔のレーダーから発見されないよう続けられるかを心配するなら、次のヒントを見て、元証人のコンテンツを閲覧する際の参考にしましょう。

ペンネームの利用

 ソーシャルメディアはすばらしい道具です。世間とのつながりを維持でき、声を上げられます。プライバシーに注意しながらも、プラットフォーム上ではコメントを使って他人と楽しみを増やせます。
 特にFacebookは元証人が声を上げるための極めて有用な情報源です。知っている人、立場を支持する人たちにコメントを拡散するために連携できます。Facebookのユーザーが多くなればなるほど、ますます有益になります。
 大事なのは素性をつかまれる恐れのないペンネームのアカウントを使ってFacebookやツイッターでコメントしたりシェアすることです。
 You Tubeにも当てはまります。背教者のビデオを閲覧する時、証人の友人や家族や長老がリンクできるチャネルでコンテンツに寄付した痕跡を残さないよう、注意します。常に慎重さを期すために手段としてペンネームアカウントを利用します。
 ペンネームのアカウントで発言の機会を利用するといった安易な手段を取らないと、クラウド上で汚名を着せられたり反対される可能性が残ります。それはほんの小さな名札です。名前が間違ったコンテンツに残される時があります。それは重大な結果をもたらします。素性をさらさないために注意を怠りなく。
 現役証人の配偶者や家族から背教の気配を感じ取られた時、もめる恐れがあるときには秘密の手段として共有しているパソコンには有罪と見なされる証拠を残さないよう確保しなさい。
 他人が使えない専用のパソコンを持つことが理想的です。アクティベートする際にはパスワードを求められるようにします。家族の誰もが容易に使えるタブレットPCや電話装置から背教のコンテンツを見るならブライベートモードに切り替えて履歴に残らないようにします。念のため、見終わったらブラウザを閉じる必要があります。
 配偶者から不信仰を隠すためには不幸にもそのような手だてを講じなければなりません。オンラインでポルノを見ている時には騙しとこそくな行為は誰にでも起こりえます。(私の友人は奥さんが部屋に入ると夫はすぐにブラウザを閉じる。奥さんは夫がポルノを見ていたに違いないと確信したらしい。実際は証人の教え込みの情報を見ていた)。言い訳じみてますが、十分な注意を払えばやっかいなトラブルを最小限にできます。
 背教者仲間と連絡を取るためFaceebookの偽名アカウントを使っているなら、現役証人の家族とトラブルを起こさないようにするために入ってくる通知のリスクをなくすために専用のe-mailアドレスが必要です。ツィッターやReddit通知、グーグルのアカウントでYouTubeビデオを見る時も同様です。
 e-mailアドレスを設定したらメールの送信メッセージにも注意しましょう。複数のe-mailアカウントを使用しているならなおさらです。恐ろしい実話があります。背教者と特定できるe-mailアドレスから現役証人の仕事仲間にメールしたため、商談がふいになった元証人がいました。すでに専用の「背教」アカウントを設定して運用しているなら、送信メッセージにも注意をしたほうがいいでしょう。

言い訳の用意

 どれほど用心に用心を重ねても、現役証人の友人や家族が背教者のフォーラムやYouTubeチャネルやFacebookグループで貴方の存在を突き止め、もめるかもしれません。目立ちたいのだろうとか、元の信仰を批判する資料に賛成のコメントを書き込んでいると思うでしょう。
 もし配偶者と対立するようでしたら、告白する機会を利用して疑問や心配事をおおっぴらに話し合うほうがいいでしょう。結婚は信頼と誠実さで成り立ってますから、いかなる形であれ、欺瞞にたよっていてはいたずらに問題が深刻になるだけです。
 夫婦関係の要素をシフトして対処するのは困難ではありますが、ことを荒立てないで配偶者の感情に配慮し、まじめさと共感に訴えて苦境をぼやけさせられるでしょう(次の章ではさらに詳しく家族関係をテーマにして書きます。結婚で宗教の意見の違いに直面しなければならない闘いとジレンマも扱います)。
 しかし、正体を明らかにしたくない家族から説明を求められたら(説得しようにもできない親や兄弟が相手だと長老を巻き込んでトラブルを招くだけ)対立を解消するために予め用意した「言い訳」を用意するほうがよいでしょう。「最近、落ち込んでいる。信仰の問題に答えられたら良いなと思っている。背教者についてもそうだ。例のサイトを見たけど何が言いたいかを見ただけだ。しかし真理として知らされたものとは食い違っていた。危険だと断定してからは前以上に祈っている。だからこんなサイトは見ない。心配してくれてありがとう」。
 背教と思われるコンテンツが好きだとか、賛成しているとの意見を示したら、現実にはもう少し波風が立つかもしれません。偶然「お気に入り」に入れただけとか、コメントしたのはエホバに立ち返らせる会話を始めるためだったとか言ってやれるかもしれません。けれども状況次第では白黒をつけることで運命を受け入れるほうが容易かもしれません。家族や気遣いをしてくれる人に対応するときの最善の方策は常に正直さです。

諜報活動主義

 オンラインの上で活動する時間が長くなればなるほど、ますます活発な活動家になろうという気になります。RedditやFacebookにポストする量はますます多くなります。ツイッターを使う頻度は増えるでしょう。正体を隠し、声を変え、見出しを付けたビデオをYou Tubeに流したくなるでしょう。知らない内にほかの元証人の間で名を上げ、好評を博すかもしれません。明らかに活動家の域に入っていました。私はブログに投稿するためにCedarsの偽名を使いました。さらにYou Tubeビデオにアップロードしました。当時は精神が浄化され充実感を覚え、興奮もしましたが、活動はかなりのストレスになりました。オンラインで発言する機会が多ければ多いほど、正体を突き止められるリスクは増えます。特に他の人と事実関係が共通していれば、なおさらです。
 うまく脱会するのも元証人の活動家になるのも不可能ではありません。しかしそれも実現するかは疑わしいのです。私の場合、言い訳する時間が長くなるにつれ、見せかけを終わせられるかますます不安になりました。2013年11月6日に「Cedrasの話――もはや囚人ではない」と題するブログを始めました。その年の12月29日に長老から連絡があり、審理委員会にしょっびかれました。ブログに書いた文章が背教の証拠になりました。
 まとめとして書きます。どのように消滅を果たすか、どの段階できれいさっぱり脱会するかを教える人は一人もいません。しかし、消滅が長くなればなるほど、断絶の意志が弱まることが自覚されます。口に出して不信仰になりたくなるなら特にそうです。
 常に、発見されて懲らしめを受けるのではないかと危険と隣り合わせにしておいて、まったく沈黙するかのような状況に追い込む――それがものみの塔の戦略です。協会はプロバカンダを認識するまでは忌避の方針を磨きました。忌避は避けられない、ゆがんだ現実的な方針です。特に家族関係がからむと、忌避は現実に悲惨な結果になります。



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