運転免許攻防戦 「ということで、運転免許が取りたい」 そうだ、いつもそうなのだ。 「…………マジ?」 「大マジ」 高杉が何かしようと思えば、周りが大変な迷惑を被るのだ。 「いやな、この前聞いたら、うちの隊、俺以外全員免許持ってることが発覚してよォ。仮にも総督が部下に遅れをとっていいわけがねェ。ついでに、銀時もヅラも免許持ってるだろ。辰馬は宇宙船に乗れればいいかもしれねーけど、俺も颯爽と風を感じたいと思うわけ」 酢昆布を齧りつつ過去のジャンプを読み直す神楽。その横で歌詞カード片手にお通ちゃんの新曲を聞く新八。ぐーたらと昼寝をしていた銀時と平和すぎる午後を満喫していた万事屋に突如台風は飛び込んできた。 地獄のワードを軽々と言い放ち、銀時が固まった瞬間を狙って上がりこんだ高杉である。 新八が条件反射で入れた茶をすすりつつ、念を押すように言った。 「だから、俺も免許とって」 「いやいやいや!!ヅラは免許取れなかったよ、心配するなよ!つーか、鬼兵隊って何なの!?指名手配でも教習所には入れるんですか!?」 「んだよ、最後まで聞けっつーの」 「自動車って!お前、チャリにも乗れないくせに!!この前、ヅラのチャリぼこぼこに壊した挙句、辰馬轢き、ヅラも巻き込んで川に落ちて大怪我したの忘れたわけじゃねーだろ!?」 なお、その事件の時、銀時は自分だけ逃げていたわけだが、銀時は綺麗さっぱり忘れている。 「忘れたなァ」 「高杉ィィイ!!入院したテメーらを追ってきた真選組をごまかすのがどれだけ大変だったと思ってんだ!」 「……んでよォ、実はもう仮免は取ったんだよな」 「人の話聞けェェェエエ!!!」 日頃、人のめんどくさい話は聞かない事にしていた自分だが、やられてみるとむかついた。 それよりも。むかついたとか、高杉は迷惑すぎるとか、なんでこんなバカが友達なんだろうとか、つーかヅラんとこ行けよとかはさておき、緊急事態だ。 江戸のごみごみした町をつっぱしる自動車。そして暴走する高杉……… あ、今、廃墟と化した江戸が見えた、と銀時は薄っすらと思った。 そこで不意に気になるフレーズを見つける。 過去の記憶から手繰り寄せても、高杉が勉強物が出来たためしがない。天下のテロリストとなった今でも、自分で絶対に計算をしたくないから、電卓を携帯しているような男だ。 「………お前が学科受かるはずねえよ!」 「銀時とヅラが受かったテスト如き、俺様が通らないはずねェだろ」 俺は、楽しい事には労力を惜しまないぜ、とニヤニヤ笑う高杉の脳天をとりあえず割りたい。 知っている。身に染みて、そんなことは知り尽くしてんだよコノヤロー。 「やるからには全力でやるのが俺の性分だ。で、今からレンタカーで練習すっから、ナビしろ。嫌だとか言ったら、明日の新聞、三面な」 「……おい、新八君、神楽ちゃん」 一緒に、と凍りついた銀時が呟いた時、二人は既に消えていた。 「って何がレンタカーだァァ!!パトカーじゃん!何処からどう見てもパトカーじゃん!!」 銀時は決死の覚悟で階段を下りて僅か二秒後に絶叫した。 叫ばした当人高杉は何言ってんだ、こいつという表情も露わに銀時を見返す。 「立派なレンタカーだろ?レンタカーすなわち、借りた車じゃねえか」 「借りただぁ!?これ真選組のだろ!」 「無断借用も借りたのうち」 「違ェェェエエ!!!」 つまりはこういうことだ。 見回りか何かで使われていたそれを、隊士がいなくなった隙に勝手に借りた、と。 高杉ほど指名手配犯であることを気にしていない指名手配犯もいないだろう。強いて言えば桂だ。その二人が揃って友達であることに、人生の落とし穴的な存在を感じる。 「行くぜ!!」 「………高杉、頼むから、…冷静に運転してくれ………」 既に高杉は運転席にやる気満々で乗り込んでいる。 「オイ、銀時。なんで後部座席に乗り込もうとしてんだよ。助手席に座れ」 「やだ!事故った時の致死率は助手席が一番高いんだぞ!」 「事故んねーよ。俺を信用しろって」 高杉を信用して裏切られなかった事もない。 銀時の心中はすぐに的中した。 いい加減、嫌な予感だけ的中させる自分を何とかしたい。 「高杉君」 「んだよ」 結局、助手席に収まってしまった銀時が至極真面目に言った。 高杉はスローペースで運転しつつ、どっちがアクセルだったかと身も凍るような事をほざいている。期待を裏切らず、学科のことは瞬時に忘れたらしい。 「なんで、このパトカーはサイレンを鳴らしているのかなぁ………?」 盗難車、しかも真選組の物、イン高杉といういろんな意味でぎりぎりのパトカーは、さも当然のようにサイレンを鳴らしていた。 「いいじゃねえか、人が勝手に避けるし。俺、障害物があるの嫌だ」 「教習所で練習しろよ………。つーか、今思ったけど、本末転倒じゃねぇ?」 「細けぇ男はモテねぇぜ」 「いや、無免許だよ今は。それよりも、サイレン鳴らしてパトカー運転する指名手配犯がいるかァ!」 そうなのだ。 人が避ける、その背景には捕り物に巻き込まれたくない及び野次馬になりたいという心理がある。 それを、天下のテロリストであり桂と共に天人からも首を狙われる高杉が運転する。 とんでもないことしかやらない男だ。しかし、やりすぎではなかろうか。 「大丈夫だって。これ防弾ガラスだし」 「……ちゃんと性能見てる当たり、むかつく」 そう言って横を見て銀時は戦慄した。 高杉の様子が変わった。正確には目が輝いた。認めたくない、だが…… 「段々テンション上がってきたぜ!行くぜェ!!」 「これ以上あげんなァァアア!!!」 叫びながら銀時は一瞬で考えを改めた。 江戸がどうなろうが、真選組がどれだけ迷惑を被ろうが、高杉がどうなろうがどうでもいい。 (俺だけは生き残ろう………) ◇ ◆ ◇ 様々な意味で天敵である高杉がテンションをあげて運転を始めた頃。 勝手にパトカーを拝借された真選組も、事態に気がついた。 「土方さーん、パトカーを盗まれやした」 屯所に帰ると、全く悪いと思っていない様子で沖田が自己申告したのである。後ろには副長の逆鱗を恐れる山崎が精一杯体を小さくして控えている。 「………は?」 「だーかーら、見回りついでに買い物に行った時に誰かが乗ってちゃったんですって」 実は沖田と山崎の耳には、土方が本気で暴れ出しそうな情報も入っているが、一旦はそこで区切った。とりあえず、どうせ怒られるなら小出しにするに限る。部下にコントロールされる男、土方。 言い切ったところで、二人は同時に耳を塞いだ。長い付き合いだ、タイミングを誤るはずがない。 「テメェらァ!!!切腹だこらァァァア!!!!」 「……あ、あのですね、副長…………」 「んだこらァ!とっとといえ!」 山崎は苦しげに掴まれた襟元に手をやりつつ、消え入るような声で言った。 「目撃証言を照合しますと………窃盗犯は、あの高杉みたいなんですよね………」 土方が停止し、凍れる沈黙が降りた。 一方、そんな騒ぎを知らないパトカー内は既に混沌を極めていた。 「だから、常にブレーキから足を離すなって言ったろ!?」 「車はアクセルさえ出来れば運転できんだよ、銀時馬鹿じゃね?」 「あぁ、俺は馬鹿だよ。でもテメーは馬鹿な上公共的に迷惑だ!」 銀時は心の中で、横の馬鹿と友達になってしまった過去の自分を呪った。 既に。 運転をはじめて、まだ半刻と経っていないのに、パトカーは満身創痍へと姿を変えていた。 それはつまり、タガの外れかけた高杉が車をいたるところにぶつけた証拠でもある。 今のところ、サイレンが効いているらしく人が犠牲にはなっていないのがせめてもの幸いだ。 「ヒッヤッホーイ!!風を感じるな!」 「お前もう走り屋に転職しろよ!」 危うく70キロの車を制御するハンドルを手放しかけた高杉の手を元に戻しながら叫んだ。 大変最もな銀時の主張だが高杉はたいして気にもとめず言い放った。 「毎日やってたら疲れるだろうが。攘夷志士って意外にぐーたら出来るよな」 多分、この男が高杉晋助である限り、どんな職業でもサボり倒すだろうと銀時は思った。 ってゆうか、本当にぐちぐち言っても仕方のないことだが。 どうして自分だけが巻き込まれなければならないのだろう。 仮にも一心同体の万事屋なら、一緒にこの地獄行きの車に乗ってくれるべきじゃないだろうか。どうせあいつらのことだから、今頃は人に生命保険をかけているかもしれない。 ってゆうか、いっつもヅラの家か万事屋にいりびたっているくせに、どうしてこのタイミングで辰馬は仕事に行ってしまったのか。もしかしたら、高杉から話を持ちかけられてから逃げたんじゃないだろうか。 ってゆうか、現在も江戸の何処かに平和に歩いているであろう……… 馬鹿ヅラはどうして巻き込まれないのか………!! とりあえず宇宙にいる坂本は無理。神楽と新八も家に鍵をかけているだろう。 なら、何としてもヅラだけは巻き込んでしまいたい。 そうだ。それが正しい。死なばもろとも。あいつだけが暇だなど許せない。 「あ。ヅラだ」 「マァジでえっ!?」 そんな物騒な思考に没頭していたので、高杉の言葉に過剰に反応してしまった。 高杉は片手をハンドルから離し(やっぱり人の話を聞いていなかった)前方を指差した。 「ほんとだ」 「な?江戸で、長髪で、あんな気持ち悪い系のオーラ放って歩いてる奴なんてヅラしかいねーよ」 その言いたい放題言われている桂は遠めにも必死に走っていた。 「………なんでヅラ、あんなに走ってんだろ?」 暴走した高杉から一目散に逃げたいのはわかる。自分だって気持ちは同じだ。 だが、いまの彼には状況がわかっていない。普通に高杉に会った瞬間逃げるなんていじめをやった日には……やめた、恐ろしい想像はしないに限る。 「さァな。逃げるんなら追いかけるだけだろ」 高杉がまたアクセルを踏んだ瞬間、銀時は天才的にそれを思いつき叫んだ。 「パトカーだからだ!あいつ、指名手配じゃん!!」 それ以前に、運転手もそうなのだが。 ヅラビジョンではこちらは、交通ルールを華麗に無視し、本気で自分を捕まえにかかっている真選組である。少し近眼の毛のある彼が高杉を見分けられているだろうか。 そして高杉は。 「…………へェ。おもしれえ!!」 いつになく真剣な目で前方を睨み、スピードを上げた。銀時は悲鳴を挙げた。 「オオオオイイ!!どうせヅラも乗せんだろ!?普通に声掛けろよ!」 「それじゃあ面白くねェ。ヅラ、生死を賭けた興奮の鬼ごっこ中的な」 「テメェも電波かァァァ―――!!」 危険を覚悟でハンドルをもぎ取ろうとした銀時は世にも恐ろしい光景を見た。 近距離に、泣きたくなるほど近距離に桂が固まった表情で固まっている。 「待ったァァァアア!!ヅラ、逃げろォォォ――――!!!」 渾身の力で無理やり銀時はブレーキを踏んだ。 二人はそろってガラスに顔を打ったがなんとか車は仲間を轢く前に止まった。 「な………ぎ、んときにたかすぎじゃないか」 「ヅラぁ、生きてるかァ?」 高杉は欠片も悪いと思っていないであろう。 「………俺も本気で年貢の納め時かと思った……ってゆうか、ちょっと走馬灯見た」 ショッキングすぎる体験に怒る気も起きないらしい。 座り込んだ桂にいつのまにか車から降りた銀時は優しく声をかける。 「桂。悪いな、高杉がテンションあげちまってよ」 そういいつつ、両手でがっちり桂の腕を掴み、にっこりと笑った。 「コイツが運転の練習するとか言って付き合わされてるんだ」 事態の方向性はわからずとも、とりあえず嫌な予感に襲われた桂が逃げようとする。 が、銀時は必死だ。旅は道づれ、世は利益。 「お前も乗れェェェエエ!!!」 通行人からは誘拐に見えるであろう方法で、桂を後部座席に押し込む。 「ようし!客も増えた事だし、行くぜえ!!」 「イヤ―――!!!お助け―――!!!」 高杉が更に気合を入れ、桂の悲鳴が響き渡った。 ◇ ◆ ◇ 「…………銀時、どうしよう」 「どうもこうも、テメーが高杉甘やかしたのが全ての原因で、つまりバトンタッチするから責任取れ」 「いやそうじゃなくて。……パトカー、増えたな」 そりゃそうだろう。 探索に向かった真選組が探すまでもなく、高杉が通った道は微妙にボヤが出ていたり、ゴミ箱が倒れていたり、とりあえず壁に大穴が空いていたり、電信柱がへこんでいたりするのでものすごくわかりやすい。 このままでは、間違いなく交通事故に遭って死ぬのが先か、真選組に包囲され斬られるのが先かという話になってしまう。というか現在進行形っぽい。 「どうしよう、どうしよう。まだ死にたくない。マリオに再会してないし、日本の夜明けも見ていない」 「先にマリオ言うテロリストなんてもうなんの役にも立たねーよ。まあ、銀さんももちろん死にたくない」 「おわっ!」 二人がびくびくしながら会話を続けていると、珍しく高杉がびっくりしていた。 高杉が困ってるぜイヤッホローイとか考えつつも、しかし目の前に迫る状況の危機具合に二人は綺麗に声を合わせた。 「「前、前えっぇえ!??」」 「わかってらァ!ってゆうか、幕府の犬、交通ルールも守れねーのかよ!!」 「お前が言うなー!!」 こうなったらやってやるぜ!と身も凍るようなことをほざく高杉。 が、彼が切ったハンドルにより、車線に突如飛び出してきた真選組のパトカーはなんとか後方に消える。間違いなく高杉は反射でやっている。 「銀時!ヅラ、見たか!?俺ちょっと天才入ってね?」 「入るかァァアア!!てめーは、馬鹿と天才紙一重でもねーよ!馬鹿だよ馬鹿!」 「………もう逃げ切ったら天才にしてやるから、頑張れ高杉」 「え、何ヅラ君。その諦め。ってゆうか、銀さんも巻き込もうとしてる態度何」 「だって、捕まったら俺も高杉も絶対首飛ぶ!そんなら、まだ暴走車に乗ってるほうがましだ」 「本音は!?」 「銀時だけ難を逃れるような結末許せるか!!」 「死ね!!」 現在は一般市民である銀時と現役攘夷志士である桂が、状況もわきまえず内輪もめを始める。 桂は何から何までおかしな状況にある意味でぷっつんしてしまったらしい。 そんな情けないくも哀れな二人に聞きたくなかった声が聞こえてしまった。 「そこの暴走するパトカー止まりなさい!時速何キロだと思ってるんだ!一般道で70キロだぞ!」 運転している高杉まで含め、三人が同時に振り向く。 「……よりによって、一番危ない沖田君が来たよ」 「運転してるのはよりによって土方じゃないか。というか俺たちに追いついてる奴らは何だ」 「いつのまに70も出てたんだろーな。スピードを出しながらも快適運転!さすが俺」 「すごくねェェエ!!」 てんでバラバラの感想を述べる。 「高杉、桂!!今日こそ、神妙にお縄を頂戴しろ!」 「「やーだね!」」 猛スピードでハンドルをさばきつつ、土方は射殺すような目でこちらを睨んだ。 「……あれ、もしかして俺も一味になってんの?マジで、マジで?」 「総悟!俺が許す、攻撃開始!!」 「待ってました!」 無駄に挑発した高杉と桂にあっさり、土方のリミットは切れた。 その上、どちらかと言えば隊務よりも場を混乱させる事を生きがいにしている沖田に何してもいい命令を出しやがった!この地獄パトカーに一蓮托生になってしまっている一般市民をシカトして!! あんまりな仕打ちに銀時が抗議の声を上げる前にバズーカが火を噴き、腹の底に轟音が落ちた。 「鬼兵隊総督高杉晋助をナメるんじゃねぇエエエ!!!」 「おわぁぁあああ!!死ぬ!マジで死ぬ!!やめてぇぇぇ―――!!」 「すいません、俺が煽りすぎました――!ヅラが悪かったです!だから、勘弁して―――!!」 思いっきりサーキットレースの影響を受けまくったハンドル切りで桂も銀時も椅子から転げ落ち、頭をしたたかに打った。いち早く跳ね起きた銀時は窓から身を乗り出して叫ぶ。 「おおおおいい!!ここに、明らかに一般人いるだろ!」 「あ、旦那」 「あ、旦那じゃなくて!大変です!!爆裂エマージェンシー!!ここの気持ち悪い長髪とちびっこ高杉が俺を拉致してる!おまわりさんは人質を傷つけるような行為をするなァ!」 「銀時ずるいぞ!あー、違いますよ!!俺たち超仲良しで!」 「ヅラァァ!ざけんなァ!!友達なら見逃せよ!!」 「地獄の底まで共にいくのが友情だ!!」 「いるかあ!!」 悪友だなコイツら、というか馬鹿だと土方は思った。 「土方さん、攻撃続行?」 「続行だ」 「というわけで、旦那!!頑張れ、ガッツ!」 横で土方も同じポーズを取った。 「テメェラアアア!!覚えてろッォォォォ!!!!!!」 心の底からの恨みが篭められた絶叫を土方と沖田は故意に無視した。 土方が大きく車体を右に傾ける。距離は変わらないが、運転席の高杉まで一直線の位置に沖田が来ていた。その一瞬のタイミングを逃すことなく、沖田は心底楽しそうに喉の奥で笑った。 「………あばよ!」 「「「ぎゃあああああ!!!」」」 満面の笑みで放たれたバズーカにさすがの高杉も悲鳴を上げた。 なんとか少し狙いから車をずらしたものの、遅い。 ―――運転席付近に被弾し、車内を煙が包んだ。 …………… 車は確かに動いている。それぞれがボロボロになった状況でも、先ほどよりずっと滑らかに動いている。 「……………フフッ、」 ひっ、と残りの二人が悲鳴を飲み込んだ。当然、笑ったのはこの二人ではない。ならば 無言で、髪の先がちりちりになりながらもハンドルを握っていた高杉しか残らない。 「―――銀時。お前、運転替われ」 「ももも、もしかして高杉君……!」 「追いつかれるなよ」 抑揚のない声のまま、銀時をぽいっと運転席に押し込み、自分は背負っていた荷物からライフルを取り出した。 「え、ちょっと。高杉……!」 「まて、落ち着け。飴あげるから!」 高杉がどう思い、なにを考えているか察知した銀時と桂はなんともいえない視線を見合わせ、慌てて止めに入る。しかし、その声には半分近く諦めがあった。 「応戦してやらァ!!!」 「やっぱり――!!」 「なんでこうなるんだ!真選組の馬鹿―――!!!」 どうしようどうしよう、と何も考えられなくなった二人が呟き始めた時、桂の携帯が鳴った。 「あ、坂本か!!なんだまた面倒事起こしたとか言うな、俺は悪くない。「覚悟しやがれェェェエエ!!!」……いや、高杉がこうぷっつんして、ああああ!切ろうとしない!切ろうとしない!お願い切らないで下さい!………大体俺は、お前を迎えに行く間に災難にあってだな…………え?もう江戸上空にいる?…そう、そのもしかしての混沌としてるあたりの先頭のパトカー!…………引き上げてくれる!?あーもう坂本男前!……すいませんすいません、調子こきました!!」 そこまで話すと、そう言えば上空に坂本の私船「もっちゃん号」がいる。 「銀時!」 「わかってる!」 ロープが降りてくるタイミングを見計らい、急ブレーキをかける。 土方に狙いをつけていた高杉がこけた。 見惚れるほど見事なタイミングでロープが車に巻きつき、ぐらりと揺れた。 「何すんだ!!つーか、」 「心臓がシェイクされる―――!!」 「うげぇぇぇえええ!!」 坂本のお陰で逃げ切りはしたものの、江戸中の自動車講習所に真選組隊士が張り込みを始めたため、高杉運転免許作戦は水泡に帰したのは二日後。 安全運転で走行しましょう。これが例のパトカー事件。 |