二年次Jr選抜仲良し編(Call me)


「大体、携帯の電波も届かないような場所に合宿地なんか建てるなんて頭おかしいぜ」

誰もが皆、君の家みたいにリゾート地にでかい施設建てられるわけじゃないからと言いかけた千石の口を柳が塞ぐ。せっかく布団を引いたのにぶち壊しにされるのは嫌だった。
跡部の愚痴通り、携帯の電波も通じない田舎に合宿所があるため、外部との連絡手段は部屋に備え付けられた電話と公衆電話のみである。つまり、合宿参加者に連絡を取りたければフロントに名前を告げ、部屋に繋いでもらうしかないわけだ。
このめんどくさい手段を踏み、連絡を入れてくるやつなどなかなかいないのになと他の三名が不思議に思っている間に、跡部は既に電話を取っている。


「俺だ、どうした?……なんだ、ジロー。今日は随分遅くまで起きてるな。……ああ、スマッシュ練習地獄だった……って、宍戸の声しねぇか?お前らまさか、部室にいるんじゃねぇだろうな?……アァ?忍足の家?」


「跡部君って、結構饒舌な所あるんだね」
ふとした拍子に出てきた、跡部の氷帝での一面に述べられたコメントに真田と柳は文句なしというように頷く。心なしか、和んでいる感も漂う跡部はなかなか見られるものではない。


「誰がいるんだよ……いちいち出て騒ぐな、向日……滝、お前何気に笑ってるだろ……忍足がメシ作ってんのか、宍戸も?……物は食えるんだろうな」


どうやら、電話は芥川慈郎から、忍足宅より。
跡部を筆頭に先輩たちがいない事を利用し、二年生――向日岳人、滝萩之介、忍足侑士、宍戸亮、芥川慈郎の五名が騒いでいるということはわかった。

「たるんどるな、氷帝」
「仲がいいのは良い事だぞ、弦一郎。それよりこのまま聞いていた方が面白そうだな」
「うん。ということで、"これ"ですか?」

にっと悪魔のように笑った千石の指が、スピーカーボタンを這う。誰も止めない。
次の瞬間、盛大に部屋中に騒音が鳴り響き、跡部が声を荒げた。


「てめぇ、千石!なにしやがる!……つーか、指どけやがれ!」
「やだもーん。あ、芥川君?こちら、千石清純ー!跡部君と同じ部屋にいまーす」
【千石ー、お久さー!……みんなー、あとべの部屋に千石がいるよ!あ、がっくんにパス!】
【よお、跡部が世話になってんな!
……おい、宍戸!それ跡部のじゃね?
「俺のものになんかしてんのかよ!」
【いやいや、そんな。俺たちを信用しろよ!
―――あかん!跡部、帰ってきたらきれよるで
「忍足ぃ!なにしてやがる!滝も止めろ!」
【滝だよ。何で俺が。
……岳人、そのアルバム俺も見るんだから、出しとけよ跡部大丈夫だよ。俺たちの観点では変なことしてないから♪】
「お前らの観点を信用して何度裏切られたかわかんねぇよ!」
【聞こえませーん。宍戸にパス!】
【おーい、跡部!お前、俺らの恥になることやってないだろーな?優しい宍戸様は心配で仕方がないぜ。ま、せいぜい帰ってから俺たちの芸術に酔いなぁ!】
「………くたばれ、このくそ!」


跡部が完全におちょくられた怒りに身体を震わせ、電話を叩き切った時、既に室内では三人が笑いの海に悶絶していた。


                                  (皆は跡部のアルバムにらくがきしてます)