二年次Jr選抜仲良し編(恋について) 「ということで、合宿と言えば恋バナでーす!」 前日、正座をしたにもかかわらず、相変わらず元気な千石が高らかに宣言した。 二日目ともなると、Jr選抜初参戦の二年生とて、生活に馴染んでくる。健全なる男子の一番の話題、恋バナが出るのは当然と言えば当然だった。 「ま、当然のように柳、真田、お前らも参加だ。逃げんじゃねーぞ」 「跡部まで何をアホな……」 真田が呆れるものの、跡部は今日の朝の地点で千石と協定を結んでいる。千石曰く「ほら、真田君と柳君ってどっちも古風じゃん?清楚なお嬢様がさ、毎日部活から帰ってきたら交換日記をお持ちしましたとか言って門前に立ってたりとか!」 それに跡部は二つ返事で乗ったのである。彼は少しでも楽しそうで自分に被害がこないような事であれば、労力は惜しまない。 もとより、柳も他人の受難を楽しむタイプの人間なので、素早くノートを取り出している。 千石と跡部が真田の両端に陣取り、柳がその前に座る。 「跡部君ってさー、明らかに失恋女子メーカーだけど、最初の子と付き合ったのっていつ?」 やはり、口火を切るのは発案者と協力者の二人。 「誰が失恋女子メーカーだ。誰が。俺はテニスが一番なんだよ。……最初は、忘れた、中一くらいだろ」 「もー、それ他の男子に言ったら刺されるよ。まあ、俺も中一だったかな?現在はフリー」 「モテない男の僻みなんぞ、聞く気はしねーよ。おい、柳はどうだ」 どうにもジャンル外の話で場が盛り上がり、挙動不審の真田の横で柳は涼しく笑う。 「俺はまだ誰とも付き合ったことはないな」 「あー!その感じ、告白はされてるけど断りまくってる男の余裕だ!」 「おいおい、柳。お前意外にやるじゃねーの」 「俺は手の内が読めない――未知数で俺を翻弄できる女としか付き合う気はない」 「………な、なかなかいないと思うけど」 「つーか、怖いだろ。真田!お前もなんか言えよ。放棄すんな」 「そうだぞ、弦一郎。人を無視するのは良くないな」 別に無視しているわけではない、話についていけないだけだとは口が裂けても言えない。 仕方がないので、柳の話に相槌を打つしかない。彼の話は実は初耳だった。 「蓮司、お前が告白を受けていたとは知らなかったな」 「………あのな、弦一郎。部内で色恋沙汰は筒抜けだぞ。知らないのはお前だけだ。仁王でも見習ったらどうだ?」 呆然となった真田の顔を見て、我慢できなかった跡部と千石が同時に噴出した。 「あははっ!やっぱ、予想を裏切らないね真田君は!」 「どういう意味だ、千石」 「真田ぁ!お前、どーせ、男女交際は交換日記から派だろ。白状しろよ、アーン?」 「……跡部!」 「あながち間違ってはいないだろう。この前、先輩に男女交際はまだ早いと論議して、張り手を食らったばかりではないか」 「「あはははっ!」」 恋バナという名の真田いじめが発展し、二日目も正座した四人は、朝になると合宿内の問題グループに抜擢されていた。 (真田が可哀想/手塚がいないので救い主無し) |