攘夷派四人の日常茶飯事


86、電話

久しぶりに地球に戻った坂本が、携帯を渡したのは昨日のことだったか。
新製品の試作じゃとかなんとか言っていた気がするが、正直酒に酔っていて覚えていない。確か、

銀時は「辰馬!俺ほんとお前好き!やっぱ、出先で携帯ないと不便なんだよなー。仕事に差し障るんだよな!」
とプーの分際で社会人みたいなことを言っていた。
「困るほど仕事もないだろう」と真実を突いたヅラを殴ってから、「基本料金よろしく!」と恥ずかしいことをほざいた。

ちなみに代金は全部坂本が持っているわけだが、俺は別に請求したわけじゃない。
純粋に書類が面倒なだけだ。金はある。

ヅラは「馬鹿者!すぐに天人の技術に惑わされおって!……まあいい。ところでメェルという機能も使えるのか?」
と、頭の古さを露見させなければ気がすまないコメントを残した。


ちなみに一番最初にメールを覚えたのは(面倒なことに)ヅラだった。
オバQがデートに行ってしまって寂しいとか、真撰組がしつこいもしかして惚れられてる?とか顔文字絵文字つきで送ってくる。ウザい。キモい。暑苦しい。俺の文章能力を駆使してもこれしか表現が出てこないのがすごい。


俺は、ここで受け取っておかないと次に変な土産を「この前は晋助にあげられなかったからのー、サービスじゃ!」とか言われて押し付けられる未来が見えたので、受け取った。
で、今これ以上にないくらい後悔している。

可哀想な位の馬鹿どもが、


『もしもし、高杉か!?真撰組に追われて西郷殿の店に駆け込んだら、風邪が大流行しているらしく、明日からヘルプに入れられた。貴様の名前と連絡先も書いちゃった。銀時もいるから心配するな!ごめん☆』

『もしもし、高杉ィ。銀さんだけどー、俺なんか酒が飲みたくなってー、いつもの料亭予約しちゃったから!高杉の名前で!ヅラにも一応言ってあるからよろしくー♪あ、お会計ごめんね☆』

『晋助グットモーニング!坂っちゃんぜよ〜!寝起きの悪い晋助が周りに迷惑かけてるんじゃないかと、心配でのー。というか暇なんじゃ。暇だよね? 
(坂本ォォォ!!おんしゃ、なにさぼっちょる!!)


………



「テメェら、電話で謝れば何やってもいいと思ってんじゃねェェェ―――!!!」



携帯とは馬鹿が馬鹿に磨きをかけるための免罪符みたいなもんだ。ああ、嫌だ。


                    (次の日には、晋ちゃんも同じことを無自覚にして喧嘩になります)